2021.08.10 ANAN8000 USBオーディオインターフェースを使う
ANAN8000DLEでWSJT-Xを使えるようになりました。 その接続をする過程でANAN8000DLEにデジタル音声入出力をするVAC機能について勉強しました。
SSB通信用には暗雑音を抑えるためマイクとトランシーバーの間にアナログプリアンプを挿入しています。(2017.10.30) このプリアンプで暗雑音は-50dBに改善していますが、ANAN8000DLEとIC-7610を切り替えるとマイクも切り替えるわずらわしさがありました。 両トランシーバー共に同じパソコンを使いFT8通信ができていますので、SSB音声通信もパソコン経由であればマイクの切り替えをせずに済みます。
ANAN8000DLEにUSBオーディオインターフェースを使ってSSB通信を出来るようにしてみました。
USBオーディオインターフェースとは
マイクや楽器をPCに繋ぐためのUSB機器です。 マイク等からのアナログオーディオをデジタル変換してPCに送ったり、パソコンからオーディオシグナルを受け取ったりします。 PCで音楽の作成、ミキシングなどするために発達したオーディオ入力機器ですから、オーディオを高品質でデジタル化したり、再生したり出来ます。 オーディオ信号を容易にPCに取り込めること、暗雑音が極めて低い(-100dB程)こと、PCでの様々な処理をするソフトが充実している事から初級クラスから高級クラスまで様々なレベルの機器が販売されています。 アマチュア無線の通信には音楽品質はオーバースペックですが、安定して作動するSSB通信にあった機器を探します。
USBオーディオインターフェースの選定
- ビット数・サンプリングレート: ANAN8000DLEもIC7610もビット数・サンプリングレートは16ビット・48KHzのCD品質です。 現在入手できるオーディオインターフェースは最低でも24ビット・48KHzなので、どの機種でもよさそうです。
- サウンドドライバー: Windowsの標準サウンドドライバー(MME)はおよそ100msecの遅れが生じます。 通信にはその程度の遅れはさほど問題ないかもしれませんが、VOXを使ったり、リモートで使ったりすると違和感が生ずるかもしれません。 WindowsのWDMドライバーを使えると遅れが30msec程に改善されますが、PCによってはついていない場合があります。 そのためUSBオーディオインターフェースでは音楽編集用に遅れの少ないASIOドライバーが付属している機種があります。ASIOドライバーの備わった機種が好ましいでしょう(高級機種には大抵ついています)。
- 音質・マイク形式: オーディオインターフェースは音楽用に開発されていますので、通信用であれば自分の持っているマイクや好みで選定すれば通信には支障ありませんね。
通信用目的には、入門用USBオーディオインターフェースとクラス分けされる機種で十分でしょう。 私は2021年1月に販売されたM-AUDIOのM-Track Duoを使います。 この機器は入門クラスの機器でありながら、専用のASIOドライバーが提供され、プリアンプ2台を内蔵したもので、入門クラスとしては音質も良いという評判のものです。 2017年に購入したオーデオテクニカのAT-MA2とほぼ同価格の6000円程でした。
M-Track DuoとVoicemeeter Bananaのセットアップ
M-AUDIOのサイトからM-Track Duo専用のASIOドライバーをダウンロードし、パソコンに組み込みます。 ビット数・サンプリングレートはデフォールトで音楽用に一般的な24ビット・48KHzとなっており、そのままでも動きますが、通信用に使いますので、ANAN8000DLEやWSJT-Xと同一の16ビット・48KHzに変更しました。
Voicemeeter Bananaはデジタル音声の切り替えやミキシングに使う仮想ミキサーで、使ってみて気に入ったらドネーションをするドネーションウエアになります。 この仮想ミキサーで、ANAN8000DLE、IC-7610とWSJT-Xの入出力をコントロールします。 ここからVoicemeeter2.0.5.8(EXE file)をダウンロードしパソコンに組み込みます。 Voicemeeter Bananaは入力端子3、出力端子3、および仮想入力端子2、仮想入力端子2を備えています。 仮想端子が入出力に2個あるので、仮想オーディオケーブルは使わなくて済みます。
機器とパソコンの接続は次にようなケーブル1本だけです。
- ANAN8000DLE ←→ パソコン: LANケーブル
- IC-7610 ←→ パソコン: USBケーブル
- USBオーディオインターフェース ←→ パソコン: USBケーブル
- USBオーディオインターフェース ← マイク: オーディオケーブル
- USBオーディオインターフェース → ヘッドフォン: オーディオケーブル
VoicemeeterBananaとの信号やり取りはこんな感じです。 青色背景がBananaへの入力信号で、緑色背景がBananaから各機器への出力になります。
USBオーディオインターフェースとVoicemeeter Banana間の設定
トランシーバーで受信したオーディオ信号をヘッドフォンに流し、マイクで拾った音声をトランシーバーに送るためにBananaとの入出力設定をします。 Bananaから見て対象(M-Track)がハードウエアなので、Bananaからケーブルを伸ばし、MtrackにプラグインするがごとくBanana側で設定します。
- Bananaの【Hardware Input1】をクリックし入力を指定。 リストの中から【WDE:Line1/2(M-audio M-track Solo and Duo)】を選択します。
- Bananaの【A1】ボタンをクリックし出力を指定。 リストの中から【ASIO:M-Audio M-track Solo and Duo ASIO】を選択します。
IC-7610とVoicemeeter Banana間の設定
IC-7610で受信したオーディオ信号をBananaに取り込み、Bananaで取り込んだオーディオをIC-7610に送るための入出力設定をします。 Bananaから見て対象(IC-7610)がハードウエアなので、Bananaからケーブルを伸ばし、IC-7610にプラグインするがごとくBanana側で設定します。
- Bananaの【Hardware Input2】をクリックし入力を指定。 リストの中から【Output(USB Audio CODEC)】を選択します。
- Bananaの【A2】ボタンをクリックし出力を指定。 リストの中から【Input(USB Audio CODEC)】を選択します。
Thetis(ANAN8000)とVoicemeeter Banana間の設定
Thetis(ANAN-8000)で受信したオーディオ信号をBananaに取り込み、Bananaで取り込んだオーディオをThetis(ANAN8000)に送るための入出力設定をします。 対象(Thetis)がソフトウエアなので、Banana側からプラグインする端子がありません。 このような場合の入力、出力のためにBanana側に仮想入出力端子が設けられています。 Thetis側からケーブルを伸ばしBananaにプラグインするような設定となります。
- Thetisの【Setup】画面から【Audio】⇒【VAC1】とタブをクリックし、設定画面を開きます。
- Driverから ASIO を選択
- Input から Voicemeeter Virtual ASIO を選択。 これがBananaの仮想出力端1です。
- Output から Voicemeeter Virtual ASIO を選択。 これがBananaの仮想入力端1です。
- Apply ボタンを押して完了です。
WSJT-XとVoicemeeter Banana間の設定
WSJT-XにBanana経由で受信信号を送り、WSJT-Xの送信信号をBanana経由でトランシーバーに送るための入出力設定をします。 対象(WSJT-X)がソフトウエアなので、Banana側からプラグインする端子がありません。 このような場合の入力、出力のためにBanana側に仮想入出力端子が設けられています。 WSJT-X側からケーブルを伸ばしBananaにプラグインするような設定となります。
- WSJT-Xの設定画面からオーディオを開きます。
- WSJT-Xへのオーディオ入力端として、Voicemeeter Aux Output(VB=Audio VoiceMeeter AUX VAIO)を選択します。 仮想出力端2です。
- WSJT-XからBananaへの出力先として、Voicemeeter Aux Input(VB-Audio VoiceMeeter AUX VAIO)を選択します。 仮想入力端2です。
- OKボタンをおして設定完了です。
VoicemeeterBanana内のオーディオルーティング
入出力端の結線が完了しましたので、次はBanana内部での結線をします。
- IC-7610の受信信号はHardware Input2に受けてヘッドホンとWSJT-Xに送るため、
Hardware Input2の【A1】ボタンと【B2】ボタンをオンにします。 A1端子経由でヘッドホンへ、B2端子経由でWSJT-Xに信号が送られます。 - Thetis(ANAN8000)の受信信号はVirtual Input1に受けてヘッドホンとWSJT-Xに送るため、
VoiceMeeter VAIO1の【A1】ボタンと【B2】ボタンをオンにします。 A1端子経由でヘッドホンへ、B2端子経由でWSJT-Xに信号が送られます。 - マイク音声はHardware Input1に受けてIC-7610とThetis(ANAN8000)に送るため
Hardware Input1の【A2】ボタンと【B1】ボタンをオンにします。 A2端子経由でIC-7610へ、B1端子経由でThetis(ANAN8000)に音声が送られます。 - WSJT-Xの送信信号はVirtual Input2に受けてIC-7610とThetis(ANAN8000)に送るため
VoiceMeeter VAIO1の【A2】ボタンと【B1】ボタンをオンにします。A2端子経由でIC-7610へ、B1端子経由でThetis(ANAN8000)に音声が送られます。
USBオーディオインターフェースとVoicemeeter Bananaを使った効果
Voicemeeter Bananaのデジタル切り替え機能を使い、トランシーバー2台と通信手段(SSB音声通信、FT8通信)をスムーズに切り替える事ができるようになりました。
無線通信ですから音声品質はあまりこだわっていませんが、USBオーディオインターフェースを使ったおかげで、クリアな音になり、かつ暗雑音が -50dBから -75dB以上に改善しています。