今田元喜の冒険旅行

プロローグ 冒険旅行の始まり

 私は極めて平凡でまじめなサラリーマンであった。 58歳の秋、偶然のきっかけで、それまで全く縁がなかったオートバイに触ったのが、冒険旅行の始まりです。

 勤めの隙間を縫って、オートバイでグランドキャニオンをゆったりと走ったり、ヨーロッパアルプスの峠道を疾走したりしたが、退職し時間に余裕が出来てからは、ニュージーランドやイギリスをソロツーリングしたり、夫婦でアフリカ旅行をしたり、ナローボートでイギリスの田舎の暮らしを味わったりと、パッケージの観光ツアーには目をくれず冒険旅行を楽しんでいます。

1945年生まれ

 団塊の世代の退職が始まり、大勢のシルバー世代がボランティアや趣味で楽しく活躍しているが、私はそのちょっと前の終戦の年に生まれた。 戦後が終わり、日本は高度成長を謳歌し、自信をもって世界に伍していく中、大勢のサラリーマンと同じく、仕事に追い立てられても、それをやり遂げるのが楽しかった。 趣味という趣味も持たずただただ仕事のいわゆる企業戦士の一人であった。 60歳に近くなると漫然と何か趣味を持たねばと思うものの何からはじめればよいかわからなかった。

オートバイのきっかけ

 58歳の秋、珍しく息子から頼みがあると電話があった。 息子は大学進学の時、就職の時、そして転職の時と人生の大きな節目でさえも親に相談することなく自分で決めて歩いてきた。 そんな息子から頼みがあると言われたのはきわめて珍しいことである。

 何の頼みかと思ったら、 「週に1回オートバイのエンジンをかけてくれ」と言う。 息子は数年前に東京から北海道に転勤していた。 冬はオートバイを使えないので、あまり雪のない四国に預けるからとの頼みであった。 春になり保管していたオートバイを始動させるのに毎年かなり苦労したようだ。 オートバイはひと月もエンジンをかけないと調子が悪くなるようである。

 それから週1回エンジンをかけることになった。 はじめの何回かは、エンジンをかけしばらくして止めるだけであったが、オートバイに触っている内にちょっと乗ってみようかという気になってしまった。 オートバイに乗ったことはないが自転車なら乗れる。 幸い昔運転免許を取得したおかげで私は大型2輪免許の持ち主である。 息子から預かったヘルメットをかぶり車のいない裏道を100mほど乗ってみた。 ゆっくりと走り、無事家に着いたときはほんの少し乗っただけだったが気持ちが高ぶっていた。 やったー。

 数ヶ月もすると100mが1Kmになり、10Kmそしてついには隣の市まで行ってしまった。

四国のツーリング

 それからは時々息子のオートバイで四国を駆け回った。 海沿いに走り岬を過ぎると漁師町、山道の峠を越えると小さな町に出る。 海の匂い、森の匂い、そして行く先々の町の匂い。 ツーリングの醍醐味である。 息子のオートバイで楽しんでいたが、半年もすると自分のオートバイがほしくなりついに手に入れたのがお年寄り向きのハーレー(*1)。 それからは週末にはオートバイでお出かけ。 もっぱらと言うよりすべて一人旅。 オートバイはソロツーリングが似合う。

 夏に早起きすれば四国の海岸を一周できる。 瀬戸内海の静かな海にたたずむ島々、太平洋のうねりのような大きな波、南国の風と太陽、そして峠を越えて出会う小さな村落の自然と一体になったたたずまい。 思い出しても美しい景色だ。 春や秋は山の景色もよい。 紅葉の季節も十分に楽しめるが、若葉の季節の大歩危・小歩危の新緑は命の芽吹きを感じとても好きだ。

 四国には高い山がある。 近畿以西で一番高いのが石鎚山。 剣山も高い山だ。 この山々に通じる山道も私の遊び場。 国道から始まり、県道そして昔からある生活道路などがそこここにあり春から秋まで週末にはソロツーリング。 冬場は四国の山にも雪が降り、山の近くは路面が凍る。 冬はもっぱら海岸線のソロツーリング。 何度通っても飽きないもの。

未知の世界へ

 しかし、未知の世界へと向かうのがライダーの性のようだ。 まず手始めが瀬戸大橋、しまなみ海道を使って山陽地方へ足を伸ばしやがて近畿、中国を制覇。 次に九州にも足を伸ばしほとんどの国道を走った。 未知の世界への欲望はとまらず退職後移住してきた外房を拠点に中部以北のソロツーリングが続いた。

 やがて目が海外に向かうのは必然であった。 冒険旅行の始まりです。

ハーレーの店

 松山にあるアメリカのカントリーハウスを思わせるオートバイデビューには入りやすく居心地の良い店。 店のカミさん葉子さんは若者には頼りになる母、シルバーにはよき話し相手。 店員も気さくで、親切です。

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