2017.07.08 厚床レール&フットパス  (1周コース 日帰りパック)

8時18分 釧路駅発

 釧路駅を定時に出発した1両気動車は花咲線(根室本線)を厚岸、厚床方面に走り出します。 今日も東京は真夏日のようだが釧路は23度と快適な気温です。 列車にはクーラーは無く、天井で扇風機がぐるぐると回っていますが、この列車は窓が開くので、少し窓を上にあげて外気を入れれば、もう涼しいくらいです。

オジロワシとタンチョウ

 列車はしばらく山の中を走るが、厚岸に近づくと海岸に出てきました。 右手に葦原があり、その向こうは浅い海です。 海岸をぼんやりと眺めていたら、レール横の木から大きな鳥が海へ飛び出した。 オジロワシです。 オジロワシは北海道に飛来する冬鳥ですが、北海道の東部にはシベリアに帰らず夏も留まるオジロワシがいるのです。 列車が近づいたので、しぶしぶ飛び出したのでしょう。 悠々と飛び去って行った。

 厚岸駅を過ぎると右手に見えるのは海ではなく厚岸湖です。 海とつながった汽水湖でカキの養殖が盛んで、町中はカキの旗がいっぱいはためいています。

 厚岸湖の岸辺近くに白い点が二つ。 よく見ると、タンチョウのつがいでした。 車窓からオジロワシとタンチョウを見れるのはいかにも北海道の東部ならではの風景ですね。

厚床駅はフットパスの出発点

 定刻通り10時少し前に厚床駅に着きました。 釧路駅でもらったのは厚床までの往復乗車券、地図引換券、昼食券だけでした。 その時、JRの窓口嬢は「厚床に着いたら国道のガソリンスタンドで地図をもらってからフットパスを進んでください。」と言ってたので、150mほど先の国道にあるガソリンスタンドで地図をもらい、トイレを借用したらいよいよパスに向かって出発です。

厚床駅

 出発点は厚床駅の横で、写真の赤矢印がパスの入り口です。 このパスは厚床駅から分岐した標津線跡を利用しているので、厚床駅のプラットフォーム横が入り口なのです。 標津線跡は厚床駅を出るとしばらくは花咲線と並走し、やがて左に緩やかに曲がり標津町を目指します。 フットパスを進むと、草が茂り、ついには葦の中で見通しが悪くなりますが、足元はしっかり草刈りをしてあります。

fp01

 草刈りされた細道を進むと急に視野が広がり、左が牛乳工場、右が花咲線です。 標津線がここを通っていた事が想像できます。 写真は工場のフェンスです。 フェンスには「ここがパスですよ。 そのまま進んでください。」との意味の表示がありました。

国有林を行く


fp02

 牛乳工場裏を過ぎるといよいよ自然を満喫できるフットパスの始まりです。 フットパス(標津線跡)は緩やかに左に曲がり、国道44号線の下を潜り抜けると標津線跡に隣接してる国有林の中を進みます。 この国有林は厚床苗畑事業所の跡地で、平坦な林です。 国有林の中は風の音だけが聞こえる静かな道です。 突然、ヒヨドリの番いが梢でけたたましく鳴きだしました。 逃げもせず目の前の梢に止まり、鳴き続けています。 ヒヨドリの巣があり、子育てをしているのでしょう。 侵入者が巣に近づかぬように一生懸命鳴き続けているのは健気です。 急いでその場を離れることにしました。 林に再び静けさが戻り、騒音も聞こえません。 木漏れ日の中をゆっくりと森林浴をしながら進みます。

フットパスにある案内板は全部で17個。


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 №17の案内板から始まりゴールの厚床駅の№1案内板へとなるように歩きました。 フットパスの地図と案内板で今どこにいるかがわかります。

フットパスは再び標津線跡へ


fp04

 国有林を抜け再び標津線跡に戻り進みます。 標津線は1989年4月29日に廃線となっていますのでまもなく30年となります。 すでに草地に戻っていますが線路の名残のバラストがまだ所々に残っていました。

突然フットパスは廃線跡から離れます。


fp05

 はて、フットパスはどこでしょう? 目の前は牧草地でフットパスらしき踏み固めた道はありません。 地図と案内板を見比べました。

丘の頂上に向かって歩け


fp06

 ここにあった案内板です。 左右に広がる広大な牧草地を「丘の頂上へ向かって歩いてください」とだけ書かれています。 右にも左にも丘があります。 地図を見ればどちらの丘に向かうかがわかる仕掛けです。 さてどちらに歩いたらよいでしょう。

牧草地の真ん中を丘に向かって歩く


fp07

 牧草地には誰もいません。 ただ一人広い広い牧草地に踏み出しました。 真ん中まで行き、目標の丘に向かって歩き出します。 イギリスで放牧地を使ったフットパスを歩いたことがあります。 放牧地には牛、馬やヤギの落とし物がいっぱいあり、素晴らしい景色を堪能するにも足元に気を付けなければなりませんでした。 しかし、ここは牧草を採取する畑のようで、落し物は全くありません。 チクチクするのを我慢すれば寝転んでも良いきれいな牧草地でした。 今年の1回目の草刈りを終わったところで歩きやすく、広々とした景色を独占した気持ちです。 気分も軽く丘の頂上に立ちました。

丘の頂上から


fp08

 丘の頂上に立ち、向こうを見るといい景色です。 牧草地の向こうは林が見えるだけ。 出口の標識など野暮なものは見えません。 コースを作った人の遊び心がうれしい限りです。 地図を見る初歩的な力があれば全く問題はありませんし、このコース全体が携帯電話の通信範囲ですから地図を読めなくても不安はないでしょう。 地図を見てフットパスのルートと思われる方へと歩を進めます。 牧草地の縁にちゃんとA11の標識がありました。

フットパスは次の牧草地を抜け、牧場が経営するレストランへ

 フットパスは森の中をもう一つの牧草地に向かっています。

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 ここは廃線跡に似ていますがわだち跡がありました。 地図を見ると廃線跡はまだまだ北へと続いていますが、フットパスは西に折れ隣接の牧草地へと進みます。 牧草地に出ると国道が見え、その向こうに牧場のレストランが見えます。 牧草地を抜け、国道を横切るとこのフットパスの休憩所となるレストランです。 国道に隣接のレストランで、自動車でのお客でにぎわっていました。 このレストランでの昼食はパック料金に入っており、一番奥の景色の良い窓側の予約テーブルに案内されました。

昼食はビーフシチュー

 注文を聞きに来た可愛い従業員に「今通て来た牧草地はこの牧場のもの?」と聞くと、ちょっと自慢気に「ええ」との答え。 もう一つ「牧場の広さはどのくらい?」との質問にはちょっと困ったようだったが、また自慢顔で「ここから見える牧草地は全部この牧場のものです。」とにっこり。

fp10

 さて、昼食はこの牧場で育てた和牛・明郷短角牛のビーフシチューとエスカロップのチョイスです。 迷うことなく大好きなビーフシチューを選びました。 シチューにはごはんではなくベーグルが似合います。 「食後はコーヒーにしますか?ミルクにしますか?」との問いに、「牧場に来たのだからここで採れたミルクを飲みたい。」と答えると、またまたにっこりでした。 運動の後で昼食はうまく、冷たいミルクもおいしかった。

フットパス 後半

 45分の昼食休憩の後、フットパスの後半は4Kmを歩きます。 地図を見ると、後半はこの牧場自慢の牧草地の中を歩き、その後殖民軌道跡(殖民軌道とは北海道で1925年から始まった未開地での道路の代替手段という性質を持った簡便なもので、一般的な鉄道・軌道とは異なる=Wikipedia)を厚床駅まで戻るコースです。 このフットパスは前半、後半共に軌道跡を利用した面白いルートですね。

fp11

 さて、レストランを出発し、牧場の真ん中の作業道路を進みます。 左右に牧舎、大型作業車の車庫などがありましたが、次第に左右は牧草地となりました。 右前方の丘からエンジン音が聞こえてきます。 何をしているのでしょう。

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 刈り取った牧草を運んでいました。 牧草は乾燥させて巻いていますが一巻きが350Kgほどの重さと聞きました。 17巻き積んでいますので重量は6トンですね。 これまで通ってきたフットパスのわだちの主はトラクターでした。

fp13

 わだち跡がなくなり目の前ははるか向こうまで牧草地です。 またコース設定者は地図を見て進めと言っています。 案内板も確認して進みましょう。

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 案内板を見ると大きく左に曲がるようです。 この広大な牧草地はいくつかのブロックに有刺鉄線で区切られています。 地図を見ると隣のブロックに行くためのゲート(キッシングゲート)が所々に作られています。 これを目安に進むことにしました。 写真を撮り忘れましたが、このゲートは人が通れる手作りのゲートでした。 リュックを背負った状態では引っかかるくらい狭いので牛は通れません。 有刺鉄線の向こう側の牧草地は牛が放牧されていましたので、そこを通るのであれば十分注意して歩かなければならないでしょうが、フットパスになっている牧草地は牧草畑のようで牛の忘れ物は無く、景色を楽しみながら歩くことができました。

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 牧草地が広大なことに呆れながら歩くとようやく木陰涼しい殖民軌道跡です。 鳥の鳴き声を聞き、草花を見ながら歩くこと数十分。 国道に出たら厚床駅が見えています。

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 国道の隣では牧草を刈り取っていました。

 厚床駅に着いたのが13時10分でした。 昼食の時間(45分)を含め 6Km+4Km のフットパスを3時間10分かかりました。 帰りの列車までまだ1時間10分ほどあります。 フットパスでバードウオッチングをしたり、草花の観察をしたりとゆっくりと歩いても、余裕をもって予定の列車(14時20分発)に乗れますね。

根室厚床レール&フットパスコース  情報

 私が利用したのはJR北海道が企画、実施してる「花咲線&グルメ 日帰り満喫パック」でした。 前半も後半も軌道跡を通ります。 軌道跡なので勾配も殆どなく、両側に木々が木陰を作っています。 さすがに牧草地は木陰のないところで緩やかな勾配もあります。 フットパスの距離は前半6Km、後半4Kmですので、初めてのフットパス挑戦としておすすめのコースです。 次の電車(17時03分)に乗るつもりであれば、もっとゆっくり歩いたり、小さな子供さんと一緒でも心配ありません。

★花咲線&グルメ 日帰り満喫パック フットパス1周コース
★企画・実施 JR北海道
★期間 2017年5月1日~9月30日
★釧路駅 8時18分発 厚床駅 9時58分着
★明郷 伊藤☆牧場 和牛ランチ
★厚床駅 14時20分発 釧路駅 15時51分着
★釧路発着 料金 3,900円

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