2021.07.04 PowerSDR mRX PSからThetisへ

 これまで PowerSDR mRX PS と言われるSDRソフトを使っていました。 不満があるわけでもありませんでしたが、以下の情報があります。 どうもThetisには優れた機能があるようです。 一方、PowerSDR mRX PS は今後の開発をせず現状のまま、開発はThetisで行うとの意思表明もあります。 Windows10がWindows11に移行するように、流れに従わざるを得ないようです。 私もFirmwareの更新(Protocol 1 から Protocol 2 へ)と PowerSDr mRX PS から Thetis への変更をしました。


Thetisはいくつかの大きな機能上の改善があります。 (Apache Labs の Forums より引用)


  • Thetisはプロトコル2ファームウェアをサポートします。プロトコル2ファームウェアは768KHzおよび1.536MHzIFサンプルレートをサポートし、これらのサンプルレートの使用は制限されていません。PureSignalおよびDiversityでも有効です。
    Thetisはプロトコル1ファームウェアもサポートしてます。 Thetisの全ての機能が使えますが、プロトコル1ファームウエアの限定された機能内での利用となります。 Thetisを使うなら、ファームウエアもプロトコル2にするのが望ましいと言えます。
  • Thetisは、DirectXを使用してスペクトル画面を描画できることが最も注目すべきところです。これにより、CPU負荷が低くなり、ウィンドウサイズに関係なく更新(フレーム)レートが向上し、全体的にはるかにスムーズになります。
  • オーディオのグリッチを発生させることなく、PCで可能なスペクトル画面の最速リフレッシュレートを見つけることができる機能があります。
  • 0-60MHzを表示できる広帯域ディスプレイ。
  • スペクトル画面でのスポッティングができる
  • 下方エキスパンダーとVOX機能の大幅改善。
  • ANAN-200D以降のハードウェアを使用している場合は、フルブレークイン交信が可能です。
  • その他にユーザーインターフェイスの改善点(数が多すぎてリストできません)

ANAN-8000DLEのファームウエアはどんなプログラムで書き換える?


トランシーバーのファームウエアは頻繁にアップデートしたり、更新したりするものではありません。 故障していなかったら何もしないのが一番よいと思っています。 そのためファームウエアを変更することもなく今まで工場出荷の Protocol 1 の状態でした。 ファームウエアの更新方法をインターネットで検索しても見つからず、更新には苦労が予想されました。
予想通り、情報不足で苦労したうえ、一度更新に失敗しANAN-8000DLEとPCをイーサネット連結出来ない状態になるなど苦労もありましたが、何度失敗してもやり直しができるようにハード的に保護されていました。 ANANのファームウエアの更新は失敗しても回復できるのでリスクはありません。

HDSDRのファームウエアの更新手順は ここに詳しく記載されています。 一度ファームウエアの更新に失敗した後、この資料にたどり着き、何度かの失敗の後無事更新に成功しました。

ファームウエアを書き込んだ EEPROMは 容量が 2MB です。 その中の赤色の範囲(0MB-1MB)はBootloaderプログラムが収められており、ByteBlasterと呼ばれるハードと.pofコードを使い書き込みます。 一方、薄緑色の範囲(1MB-2MB)はファームウエア領域です。 このファームウエア領域は以下に紹介するようにパソコンからファームウエア書き換えプログラム(HPSDR Programer または HPSDR Bootloader)で .rbfコードを使い書き込みます。 ですから、ファームウエア書き込みプログラムと .rbf コードを使っている限り、Bootloaderエリアの破壊を起こす心配はありません。 万が一ファームウエアの書き込みに失敗しても、やり直しが可能です。 俄然やる気が出てきました。

HPSDR Programmer を使い書き込んでみた。 ⇒失敗

(参考までに: HPSDR Programmer は Protocol 1 ファームウエアの下で動きます。 書き込み失敗の場合、Protocol 1 は壊れていますので、次の手順の HPSDR Bootloader で書き換えを行う必要があります。 経験から、HPSDR Bootloader の扱いは HPSDR Programmer と大きな違いがないので初めから HPSDR Bootloader で書き換えるのがお勧めです。)

  • Github-Protocol 2でANAN-8000DLE用の Protocol 2 (Orion_MkII_Protocol2_V1.9.rbf) をダウンロードしておく。
  • HPSDR Programmer and BootloaderでHPSDR Progurammer (HPSDRProgrammer_V2_nocap_2.0.4.10.msi) をダウンロードし、インストールする。
  • ANAN-8000DLEをパソコンにLANケーブルで直接繋ぎこみ、Wi-Fi等他の接続を全て外しておく。
    (注 HPSDR ProgrammerがANAN-8000DLEを見つけやすくするために、イーサネット接続をANANのみにしました。)
  • ANAN-8000DLEの電源を入れる。
  • HPSDR Programmerを起動する。 イーサネットを検出しているのを確認。
  • Discoverをクリックすると、ANAN-8000DLEが検出される。
    (注1 ANAN-8000DLEが静的IPアドレスで設定されていたら、瞬時に検出される。 しかし、通常は ANAN-8000DLEは動的IPアドレスで設定されていますので、ANANを検出するのに数十分待つ場合があります。
  • ANAN-8000DLEが検出されたら、Browse をクリックし、先にダウンロードした Protocol 2 のファイルを指定します。
  • Program をクリックし、ファームウエアの書き換えを実施します。
  • ファームウエアの書き換え進捗(ファームウエアの消去⇒ファームウエアの書き込み⇒完了)がHPSDR Programmerの下部に表示されます。
    (注 書き換えの途中でエラーメッセージが出た場合、プログラムを停止せず rbf ファイルのファイル名を metis.rbf に変更して再度Browseをクリックする手順から始めてください。 原本では 【 Click "Browse" in the Board Programmer section. Select the rbf file you want. If you get an error message you may need to rename the rbf file to "metis.rbf" because of some old code in the programmer.】の記述があります。 よく起こる現象のようです。私の場合も書き替え途中でエラーで停止しました。 つい、 HPSR Programmer を一旦シャットダウンしてしまい、再度立ち上げた時にはANANを検出できずあきらめました。 書き換えの途中での中断ですのでファームウエアはもうプロトコル1ではありません。 再度 HPSDR Bootloader を立ち上げても、ANANを検出できないのは当たり前です。  HPSDR Programmerではどうにもならない状態になりました。 こうなったら HPSDR Bootloader を使って書き換えるしかありません。)
  • 書き換えが完了したら、HPSDR Programmerをクローズし、ANAN-8000DLEをシャットダウンします。 (私は上記のように書き込みに失敗しているので、このステップにいたることはありませんでした。)

【参考 ANAN-8000DLEのファームウエアー書き込み失敗などの結果 Protocol 1 が壊れてしまった状態で、HPSDR Programmerを立ち上げても次のようなエラーメッセージがでてANAN-8000DLEを検出出来ません。 その場合、HPSDR Bootloaderを使い書き込みをします。】

HPSDR Bootloader によるファームウエアの書き換え  成功!

ファームウエアを書き換えるもう一つの方法です。 ファームウエアが無い状態、壊れた状態から書き込みができます。

  • Github-Protocol 2でANAN-8000DLE用の Protocol 2(Orion_MkII_Protocol2_V1.9.rbf) をダウンロードし、 metis.rbf とリネームしておきます。
  • WinPcap からWinPcap_4_1_3.exeをダウンロードしてインストールする。
    (情報 WinPcapはHPSDR Bootloaderで使うライブラリーです。 Win10Pcapは使わないでください。 Bootloaderが正しく作動しません。)
  • HPSDR Programmer and BootloaderでHPSDR Bootloader (HPSDRBootloader.msi) をダウンロードし、インストールする。
  • ANAN-8000DLEを一旦シャットダウンし、パソコンとANANをイーサネットケーブルでつなぎます。 WiFiほかのイーサネットケーブル等は切り離しておくと、Bootloaderが容易にANANを検出します。
  • ANAN-8000DLEのブートローダー書き込み許可スイッチをOnにします。
  • ANANを起動します。
  • HPSDR Bootloaderを起動します。
  • Test for Bootloader をクリックすると、イーサネットの探索をしてANANを検出するとそのIPアドレスを表示します。
  • Brouseをクリックし、あらかじめダウンロード( Orion_MkII_Protocol2_v1.9.rbf)してリネームしてあるファイル metis.rbf を選択します。
    画面はファイル名を変更せずに書き込んでいますが、その結果は書き込み途中で停止して見事失敗しました。 ファイル名を metis.rbf に変更して書き込んだら、最後まで書き込みができました。
  • Programをクリックすると、ファームウエアの書き込が始まり、Bootloader画面下部に進捗が表示されます。 完了するまで待ちます。
  • Bootloaderを終了します。
  • ANANをシャットダウンします。
  • ANANのBootloader 書き込み許可スイッチをオフにします。

ファームウエアをProtocol 2 に書き換えが完了しました。

Thetisインストール


  • PowerSDR mRX PSをアンインストールします。
  • Thetis v2.8.11 InstallerでThetis(Thetis-v2.8.11.x64.msi)をダウンロードし、インストールする。

新しいThetis画面でANAN-8000DLEを操作できるようになりました。 その効果は

  • DirectXの効果歴然です。 スペクトル画面が劇的にクリアになりました。 上のスナップショットでも受信中のSSB波の音声周波数分布とその時系列変化が明確に観測されます。
  • SSBオーディオ音は前のPowerSDRよりThetisの方がクリアな音で聞こえます。 その結果、より弱い信号でも交信が容易になりました。

ファームウエアの書き換えに何度も失敗し苦労しましたが、プロトコル2に変更し、Thetisに乗り換えた甲斐があるというものです。

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