2017.10.15 新オーディオツール Continuous Frequency Compression

 OpenHPSDR mRX PS はANAN-8000DLEで使うソフトですが、その最新版(V3.4.1以降)ではCFC(Continuous Frequency Compression)と呼ばれる新しいオーデオツールがあります。 従来もCompressorと呼ばれるツールがありましたが、それより柔軟なコンプレッションができるもので、調整の範囲が広く、ラグチュー、遠方通信、コンテスト、パイルアップなど通信目的に応じた送信オーディオを作ることができ、送信プロファイラーに保存して利用できますので、状況に応じた選択を瞬時にできます。 その調整法をW1AEXの記事を参考にまとめてみました。


オーデオツール ブロックフロー

 従来の送信系オーディオコンポーネント

 新オーディオツール(CFC Audio Tools のコンポーネント)

従来の送信オーディオ系調整

トランシーバーが正しく初期設定されていると、良いCFC調整に役立ちます。 新オーディオツールを使う前に、改めて基本的なオーディオチェーンコンポーネントのレベルが最適に設定されていることを確認します。

ステップ 1 MIC調整

 TXマルチメーターをMICに設定し、音源(マイクイン、ラインイン、またはVAC)を選択し、TXマルチメーターのMICレベルが常に0 dBに近づけるようにMICゲインを調整します。 ダイナミックマイクを使用している場合は、メニューの[送信]タブにある[20 dBマイクブースト]オプションを有効にする必要があります。

ステップ 2 EQ調整

 TXマルチメーターをEQに設定し、GUIコンソールの上部にあるイコライザーメニューを開き、「10バンドイコライザー」オプションを選択します。 各EQスライダの周波数ポイントをカスタマイズすることができますが、最初はデフォルト値を試してみることをお勧めします。 イコライザースライダーを調整して、オーディオソースが声のどの部分でも過度な強調のない比較的フラットなレスポンスを生成するようにします。 ダイナミックマイクロホンは低音が強調される傾向があり、コンデンサーマイクは高温の強調された明るい傾向があります。 通常はそれぞれのタイプを別々に扱う必要があります。 オーディオソースの応答を平坦にして、明白な強調がないように調整してから、EQプリアンプスライダを設定して、音声ピークが常に0dBに近づくが、0dBを超えないようにします。

ステップ 3 Leveler調整

 TXマルチメーターをLEVELERに設定し、レベラーの最大ゲイン設定を調整して、音声ピークが常に0 dBになるようにします。

ステップ 4 ALC確認

 TXマルチメータをALCに設定し、音声のピークが0 dBに達していることを確認します。 そうなっていなかったら、音声ピークが常に0 dBになるようにLEVELERゲインを調整します。 Pure Signalアルゴリズムが正しく動作するためには、これが不可欠であることに注意してください。

ステップ 5 Profilesに保存

 [HPSDT Setup]⇒[Transmit]タブで、[Transmit Filter]を希望の帯域幅に設定し、設定を[Profile]に保存します。


CFC(Continuous Frequency Compression)調整

 ステップ 5でトランシーバーの送信オーディオ系は正しく初期設定されましたので、これからCFCコンポーネントを使った調整を始めます。

 CFC(Continuous Frequency Compression)コンポーネントには、PRE-EQ、CFC、POST-EQ、およびPHASE ROTATORがあります。 CFC設定値は各TXプロファイルに含まれており、それぞれのTXプロファイル毎に設定ができるようになっています。 CFCコンポーネントを使用して送信オーディオを最適化する前に次の準備をします。

  • まず、コンソールGUIでCOMPを有効にしている場合は、これを無効にしてください。( CESSBを有効にすると、平均電力出力が大幅に上昇し、COMPが有効になっているときのハードリミット効果がさらに強調されます)。
  • Pure Signalが有効になっている場合は、一時的に無効にして、MONを有効にした状態で聞こえる音声がPure Signalで加工されないようにします。

ステップ 6 PRE-EQ調整

 ステップ 7でCFCオプションを有効にすると基本EQがPre-EQとして作動します。 上記の基本的なオーディオチェーン調整のステップ 2 EQ調整が CFCの PRE-EQになります。 CFCでは、比較的フラットな応答を生成するように設定し、TXマルチメーターでEQをモニターしているときに、音声ピーク時に0dBを超えないようにプリアンプスライダーを設定します。 その設定に満足であれば、次のステップに進みます。

ステップ 7 CFC調整

 [HPSDT Setup]⇒[DSP]タブ⇒[CFC]とタブを選択し、CFCメニューで "CFC Enable"と "Post-CFC EQ Enable"ボックスにチェックを入れます。 CFCインターフェイスには、PRE-COMPと呼ばれる全体的なゲインスライダと、10点の周波数にそれぞれ異なるレベルの圧縮を割り当てるスライダがあります。 右の画像では、帯域が3K幅のSSBプロファイルに対して最適化されています。 MONを有効にして送信オーディオを聞きながら、周波数帯域スライダを上下に調整して、音声スペクトルの各領域で声に追加する「パンチ」の量を制御します。 あなたの声に適した密度のレベルを作り出す設定ができたら、PRE-COMPスライダーを上下に調整して、全体的な圧縮レベルを変更できます。

ステップ 8 Post-EQ調整

 MONを有効にして送信信号を聞きながら、Post-EQフォームを使い送信オーディオの周波数応答を調整します。 上記の画像に示されているように、送信音声を明くするために、1750 Hzから送信フィルタの上端の3070 HzまでポストEQスライダを持ち上げています。 EQスライダを調整することで、送信音質の明瞭度、明るさ、および低音特性を向上する手段を提供しています。 EQスライダを調整した後、TXマルチメータをCFCに設定します。 マイクに向かって話しながら、PRE-COMPスライダを調整し、TXマルチメータが約0dBに達するようにします。 0dBのレベルを超過しても問題はありません。ただし、PRE-COMPとPOST EQ GAINの設定のバランスを以下のように調整してください。

ステップ 9 最終調整

右の図は新設の「CFC Comp」メーターです。 このメーターは、0dBを超えるピーク圧縮程度を0dB?+ 25dBのスケールでを表示します。 CFCコンポーネントの圧縮度を設定し、POST EQ GAINスライダを使用して送信プロファイルの全体的なゲインを調整するときに、このメーターは非常に参考になるものです。 PRE-COMPスライダはCFCコンポーネントの全体的な圧縮に影響し、POST EQ GAINスライダは送信オーディオ系のPost-EQ出力までのオーディオレベルを調整することを覚えておいてください。

 比較的軽度の圧縮をしようと計画している場合は、CFCメーターは希望の圧縮レベルに調整するのにとても有益です。

 もし、さらにCFCメーターが0dBを超えて振れるほどの強力な圧縮をしたい場合は、CFC Compメーターで圧縮レベルをモニターする方が便利です。

2つの新CFCメーター(CFCメーターとCFC Compメーター)は、Pre-CompゲインスライダーとPost-EQ Gainスライダーの2つのCFCゲインスライダーを調整することによって、どの様な圧縮や強調が起きているかを視覚的に素早く表示します。 PRE-COMPゲインスライダを上げ、POST EQ GAINスライダを下げると、CFCスライダの設定で強調した部分のパンチとラウドネスが増えることに注目してください。 PRE-COMPスライダを上げるにつれて、マルチバンドコンプレッサーのピーク圧縮レベルが上昇するのがCFC Compメーターに現れます。

 あまり圧縮を強調しない軽い圧縮プロファイルとしたい場合は、CFC メーターがボイスピークで0dB以下に収まるまでPRE-COMPスライダを下げ、ALCメーターをモニターしながら0dBに達するようにPOST EQ GAINスライダで調整することで、オーバーオールゲインを保ち、 ALCを十分に強く駆動するようにします。

 コンソールCOMPボタンとCESSBを有効にしたい場合、CFCコンポーネントの出力が過大だと、送信されたオーディオ音がやや耳障りなものになる可能性があります。これを最小限に抑えるには、CFC メーターが0dB以下の最大ピークにとどまるように、PRE-COMPスライダーを下げて調整します。 COMPとCESSBを有効にすると、出力は ALC Comp メーターで示されるように厳格に0dBに制限されます。 しかし、COMPおよびCESSBを使いながら0dBを超えるALC圧縮を有効にする先読みアルゴリズムを使用してソフトリミットをALCレベルで組み込むという、 COMPおよびCESSBユーザーのための新しい調整が利用可能となりました。

 この新しい機能は、「Setup」→「DSP」→「AGC / ALC」とAGC/ALCメニューを開き、その中の新しいALC "Max Gain"設定を使用します。 TXマルチメーターを ALC Comp 表示にして、マイクに向かってしゃべりながら、0dBから10dBまで1dBステップでALC圧縮を上げていきます。 耳障りにならない限界まで数?はALC "Max Gain"を上げられ、全体的なラウドネスを増加させるはずです。

ステップ 10 TXプロファイルを保存するのを忘れずに

 CFC設定が出来たら、「Setup」→「Tramsmit」とTransmitメニューを開き「Profiles」で、プロファイルを保存します。

ステップ 11 位相回転

 この機能を使用すると、送信音声の対称性を向上させることができます。 個々人の音声は対称性がそれぞれ異なるので、この調整は個人ごとに調整するもので、次の手順で調整します。

  • メイン画面で表示をPanadapterに切り替えます。
  • 十分に広い帯域を持つ送信プロファイルを選択し、LSBまたはUSBモードを設定します。
  • 「Setup」→「DSP」→「CFC」とCFCメニューを開き、Phase Rotatorを有効にします。
  • トランスミッターを送信にして、マイクに向かいしゃべりながら、スコープのディスプレイで音声パターンを観察します。
  • 音声パターンが水平ゼロ軸より上に多くのエネルギーを持っている場合は、より良い対称性が観察されるまでステージの数を減らしてください。
  • 音声パターンが水平ゼロ軸より下に多くのエネルギーを持っている場合は、より良い対称性が観察されるまでステージの数を増やしてください。
  • 声のエネルギーの大半が338Hzより高いかあるいは低い場合は、位相ローテータのFREQを338 Hz以外に設定してみてください。
  • 水平ゼロ軸の上下に同様のエネルギーで対称な設定が見つかったら、TXプロファイルを保存します。

最後に

 今まで行ったCFC調整ステップは、送信オーディオを最適化するための出発点と考えてください。 送信オーディオ系が満足できる仕上がりになったら、CFCスライダの周波数ポイントを変更して色々と試してみるのも良いでしょう。 そして、使っているそれぞれの送信プロファイルのCFC調整をおすすめします。

 例えば、3.0kSSBプロファイルであったら次のような周波数で試みるのも良いでしょう:(50, 150, 300, 500, 750, 1250, 1750, 2300, 2800, 3000)。 これらの数字には魔法がありませんので、調整したい帯域幅に対して最高の音色コントロールを得られる値を試してみてください。

 CFC Audio Toolsは、トランシーバーの送信オーディオを驚くほど様々に調整できます。 一方、伝統的な送信オーディオ調整の方が好ましいと思う方にはOpenHPSDRには従来通りその機能を提供しています。




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