2017.09.16 ANAN-8000DLE 送信オーディオ系調整

 トランシーバーの受信とチューニングの仕方はマスター出来ましたので、次は送信系の調整に進みますが、200Wダミーロードも早速使用します。 送信オーディオ系で調整する箇所は、下の図のMic、EQ及びLevelerそれぞれにあるゲインです。

  • Mic: マイクアンプです。 Mic出力を音声ピークで0dB以下になるようにゲイン調整をステップ8で行います。 マイク出力が小さい場合は20dBのブースターがあります。
  • EQ: イコライザーです。 好みの音に調整します。 ゲインはステップ9で行います。 イコライザーを無効(Enableのマークを外す)にすることができます。 その場合Mic出力がそのままEQ出力となります。
  • Leveler: レベラーは、その時々でオペレーターの姿勢が変わりマイクロホンからの距離や角度が変わることによって生ずるマイク出力を先読みアルゴリズムでLeveler出力をいつもと変わらぬように制御するのが目的です。 音声ピークでレベラー出力が常に0dBになるようにゲイン調整をステップ10で行います。  Leveler出力が0dBを超えないようにすることが後段のADCのオーバーロード、ひいては送信波でクリッピングやスプラッターが発生をしない為にとても重要です。 レベラーを無効(Enableのマークを外す)にすることができます。 その場合EQ出力がそのままLeveler出力となります。

マイクロフォンの接続

 アマチュア無線ではダイナミックマイクが一般的ですが、ANAN-8000DLEはパソコン用コンデンサーマイクが標準で、ダイナミックマイクも使えるようになっています。 (注: 音楽用のコンデンサーマイクは48Vのファンタム電源を使う全く別物です。 ファンタム電源を使うコンデンサーマイクは使えません。)

 ANAN-8000DLEは工場出荷時にTIP端に正電圧をかけてあり、ほとんどのパソコン用コンデンサーマイクは、正面のMICコネクターに直接差し込めば、問題なく作動します。 RING端はPTTとして利用でき、SLEEVE端は接地されています。 工場出荷時にキーボードのスペースバーがデフォールトのPTTとしていますので、PTTボタンのないマイクが使えます。

 通信が目的ですから、無指向性マイクではなく単一指向性のマイクが適しており、私はボーカル用コンデンサーマイク(SONY ECM-PCV80U)を用意しました。

送信オーディオ系の調整

 これからオーディオ系の調整になりますが、ユーザーズガイドは記述が少ないので、調整は W1AEX の手順を参考にしています。

ステップ 1

 ANANに50Ωダミーロードをつなぎ、スイッチを入れる。(電波を発射するわけではありませんが、うっかりキーボードのスペースバーに触れ送信状態になっても、SWRの低いダミーロードを接続しておれば、ファイナルが一瞬にして昇天する悲劇を避けられますのでダミーロードをつけましょう。)

ステップ 2

 PowerSDRプログラムを起動し、GUI(Grafic User Interface すなわちメイン画面です。 以降GUIと略します)の上部左端にある「Power」ボタンをクリックする。(これでPowerSDRとANANがリンクされ、トランシーバーの操作が可能となります。)

ステップ 3

 GIUの右側の電波形式窓からLSBまたはUSBを選択します。 ここではバンドが28MHz帯ですから、USBとしました。 初めての送信オーディオ系の調整なので、GUIの下側にある Transmit Profile から「Default」を選択します。 また、同じく初期の設定ですからマイクコンプレッサーはOffとして裸の状態で調整するため、「COMP」ボタン、「VOX」ボタン、「DEXP」ボタンがOn(明るい青色)であれば、クリックしてOffにします。

ステップ 4

 次にマイクアンプ部のゲインを調整します。 GUI上部のメニューから「Setup」→「Transmit」とタブを選択し、Transmitメニューを開きます。 そこで、オーデオ入力が何(マイク入力またはライン入力)であるかを選択します。 マイクジャックにマイクを挿入した場合は「Mic In」を、ライン入力をする場合は「Line In」をそれぞれ選択します。 この段階では20dB Mic Boostはチェックを外しておきます。 使っているマイクの出力が低すぎる場合、後でこのオプションを選択できるので、まずはオプションを外し裸で調整するのを勧めます。

ステップ 5

 GUI右上にあるTX Meterの中からMicを選択します。 この表示がANAN内のオーデオ段Mic出力のレベルです。

ステップ 6

 この段階ではRF出力は不要ですので、GUI左中段にある「Drive」スライドを”0”にしてRF出力を"0"にしておきましょう。

ステップ 7

 トランシーバーを送信に切り替えます。 キーボードのスペースバーがPTTになっており、スペースバーを押すたびに送信、受信が切り替わります。 スペースバーをヒットして送信にしてください。

ステップ 8

 通常通信時の調子でマイクに話しながらTX Meterの振れが0dBを超えないように「Mic」スライダーを調整します。 スライダーを右一杯にしても0dBにならないようであればマイクブースターを設定する必要があります。 ステップ4で外したMic Boostにチェックを入れて、スライダーを調整してください。 後段のイコライザーとレベラーを無効にした場合マイクアンプの出力がADCに入力されますので、ADCのクリッピングを防止するためには0dBに抑えるのが好ましいです。

ステップ 9

 イコライザーの調整です。 GUIの Tranmit Profile の「TX EQ」ボタンをOnにし、Tx MeterをEQに変更します。GUIの上部メニューからEqualizerを選択します。 上部は受信イコライザーで下部が送信イコライザーです。 初期設定ではイコライザーの10バンドすべてをフラットにしておきます。 音質にメリハリを加えるにはイコライザーの調整が必要ですが、その変更は初期設定をマスターした上で行いましょう。
 送信に切り替え、マイクに向かってしゃべり、EQメーターが0dBを超えないように、送信イコライザーの左にあるプレアンプスライダーを調整します。 MICゲイン調整と、EQゲイン調整は独立しており、EQ段の出力が過大だと後段のADCでクリッピングを起こし、ひいては送信信号が歪む原因となります。TX MeterのQEレベルができるだけ0dBに近く、しかし決して0dBを超えないように送信イコライザーのプレアンプスライダーを調整します。  イコライザーを使わない(Enableのマークを外す)とイコライザー出力はマイクアンプ出力と同じになります。

ステップ 10

 TX Meterを「Leveler」に設定します。 レベラーは、マイクロホンからの距離や角度が変わることによって生ずるマイク出力を均一にするのが目的です。 GUI上部メニューの「Setup」→「DSP」→「AGC/ALC」と選択してAGC/ALC設定ページを開きます。 レベラーを使わない(Enableのマークを外す)とレベラー出力はEQ出力と同じになります。
 送信に切り替え、マイクに向かってしゃべり、Tx Meterがいつも0dBに達するようにLevelerのMax.Gainを5から上下させて調整します。 ANANの送信オーディオ系には先読みアルゴリズムが組み込まれており、レベラー出力が0dBを超えないように制御していることに気づかれるでしょう。 これはとても効果的なソフトリミッターで、クリッピングや歪を防ぎながら全体の音量を大きくする効果があります。 どのピークでも0dBに達するようにゲインを調整してください。

ステップ 11

 TXメーターをALCにします。 音声ピークの時に常に0dBに達しているのを確認してください。 そうでない場合、Levelerの調整に戻りMax.Gainを再調整してください。 ALCでも先読みアルゴリズムが働いており、ALCが0dBを超えないように制御しています。 MIC-EQレベルが正しく設定されている限り、先読みアルゴリズムがANANの送信中のクリッピングやスプラッターの発生を防いでいますので歪の心配はありません。 さらに、Pure Signalプロトコルを使用する場合、プレディストーションアルゴリズムが信号を頻繁にサンプリングできるように、送信機は十分に駆動することが必要です。

ステップ 12

 送信オーディオ系の基本的な調整は出来ましたが、自分の好みの音質に調整してみます。 ステップ9でイコライザーの音質の調整をしませんでしたので、ここで音質を調整します。 GUIの左上部にある「MON」ボタンをOnにしてください。 イヤホンジャックに挿したイヤホンから発射している電波を聞けるようになります。 イコライザーを自分の好みに調整してください。 イコライザーの調整が終わったら、Tx MeterのEQレベルをチェックして、ほぼ0dBになるようにEQプレアンプスライダーを再調整してください。
 終了したらオーデオはスムーズできれいに聞こえるはずです。

ステップ 13

 DXオペレーション、コンテスト、ラグチューなど局面に応じたカスタム送信フィルターを作ることができます。 GUIの上部メニューの「Setup」→「Transmit」と選択して下さい。 上部左にある「Transmit Filter」で好みのフィルターを作る事ができます。 デフォールトはローカット200ヘルツ、ハイカット3100ヘルツのフィルターですが、ローカット70ヘルツ、ハイカット3070ヘルツの占有帯域幅3kHzぴったりのフィルターも可能です。 もし新しい送信フィルターを作ったら必ずステップ14を実施してください。

ステップ 14

 ステップ13までの調整を終わったら、TX Profileにその変更をセーブするのを忘れないようにしてください。 TX Profileには調整した様々なプロファイル(トランスミットフィルター、マイクゲイン、EQプリアンプレベルゲイン、イコライザーレベル、レベラーゲイン、コンプレッサーレベルと送信レベルなど)をセーブします。 調整したプロファイルをセーブしないで別のTX Profileに切り替えると、切り替える前のプロファイルは失われてしまいます。 プロファイルをセーブするには、Profilesにある「Save」ボタンを選択します。 ダイアログボックスが現れるので、セーブしておきたい名前を選択するか、あるいは新しい名前でセーブすることもできます。 プロファイルを変更するたびにセーブするか、あるいはPowerSDRをクローズする時にセーブするかのオプションがあります。 自動的にプロファイルが変更されるのを好まない方はこのオプションのチェックを外して置く方が良いでしょう。


 送信オーディオ系の調整は一応終了です。 「COMP」ボタン、「VOX」ボタン、「DEXP」ボタンなどが残っていますが、これらは後日勉強します。 次は送信CW系の調整です。 送信CW系調整の最後に200W出力のキャリブレーションがあります。




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