2023.12.03 煮干し

 我が家のお酒のお供の話。

晩酌というほどではないが、毎晩夕食にグラス一杯のビール、それが終わるとグラス一杯のワインを飲む。以前は食事の終わりにグラスに残ったワインを飲みながらチーズ一切れを食べるのが長い間の習慣だった。刺身の時も肉の時も鍋の時もそれは変わらず、夕食の〆はグラスに残ったワインとチーズ一切れであった。

 ある時、チーズに代えてナッツを数粒食べてみたら、〆にとても良かった。その時からチーズであったりナッツであったりと、その時の気分次第であるがこれがしばらく続いた。

 ピーナッツ、フライドポテト、ハムはては餃子などお酒のお供というよりお酒と食事と考えれば何でも合うだろう。しかし、食事の最後の一口のお酒にはチーズ一切れかナッツ数粒がよく合う。その〆に最近加わったのが煮干し数尾。これがなかなかの味である。

 煮干しは小魚を煮て干したもので、魚の種類は幅が広い。食べて初めて〆に合うか合わないかがわかる厄介な物である。また買ってきた煮干しをそのままでは食えたものではない。時間をかけてゆっくりと焙煎した煮干しが一番だ。カミさんの機嫌と調子が良ければ美味い煮干しにありつける。

 ある時店に並んだ煮干しの中にカタクチイワシの煮干しを見つけた。他の魚は十把ひとからげで煮干しと表示された中にカタクチイワシの煮干しは「田つくり」と書かれている。正月料理の一品に「田つくり」があるが煮干しのカタクチイワシも「田つくり」というらしい。他の煮干しはいかにも煮干し状態(腹が裂けたり、エラが無かったり、頭が無かったり)だが、この「田つくり」煮干しは大きさがそろい、姿も整った状態で確かに別格という雰囲気。

 これは美味かろうと、早速丁寧に焙煎した「田つくり」が夕食の〆に登場したが固いし、噛んでも味がない。煮干しの良いところは噛めば味が出てくるところ。残念ながら「田つくり」は姿かたちは良いものの味が振るわず夕食の〆には一回限りの登場であった。「田つくり」は年に一度正月の一品で食うもののようだ。

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