2023.10.29 クモは職人さん

 昔々、70年ほど前の思い出です。 昼過ぎ遊んでいたら庭の隅で巣作りをしているクモを見つけました。クモの巣はもう半分ほどできあがっています。近づいても作業に夢中です。尻から出ている横糸を足先で縦糸にピッと付けるともう次の縦糸に渡ろうと動いています。次の縦糸に渡ると、一回り前に付けた横糸を足で確認しもう一つの足で尻から出た糸をピッと付けるのを飽きることなく見ていました。

 さて、ひと月前の9月の早朝の事。出かけようと外に出たら車庫の横のソテツで光るものがありました。見るとクモの巣です。朝日に照らされたクモの巣がきれいで昔のことを思い出し、スマホで何枚か取ってみました。

クモの巣1

 きれいに撮ったつもりでも今一つ納得がいきません。

 それからはきれいなクモの巣を撮ろうと、しばらく庭にいるクモを追いかけました。ときには出来ているクモの巣を取り払い、新築してもらったり、またある時は背景が黒いときれいに撮れるのではとカミさんに黒い紙をかざしてもらったり。しかし出来栄えは今一つ。

ジョロウグモ

 腹が赤いジョロウグモだが、どのクモの巣にもジョロウグモのそばに小さなクモがいます。ひょっとしてメスとオスなのかしら。

クモの巣2

 2階の軒下と木の間に張ったクモの巣を見上げて撮りました。家の周りのクモの巣は教科書にあるきれいな円ではないが、クモは工夫して張っています。

 クモは横糸の間隔を測ったうえで張っているのではなく、右の後ろ足で前回張った横糸を捉え、尻から出た糸を左足で縦糸に付けているので、自分の左右の後ろ足の幅で横糸の幅が決まるようだ。人間の両手の幅を一尋(ひろ)と呼ぶが、クモにとっては巣の横糸幅はクモの「足の一ひろ」と言える。また自分の身を巣の材料に使っているので、材料を無駄に使いすぎず、時間も無駄にせず、様々な現場の条件に合わせて巣を作っている。まるで材料を無駄にせず、素早くきれいな建具を作る一流の職人の様だ

 ある日、散歩から帰ってきたカミさんが玄関から「撮れたよー」と一声。

クモの巣3

 飽きっぽい私は2週間もするとすっかり熱が冷めて忘れていたが、粘り強いかみさんが取ってきたのは薄暗い山道でとった1枚。明るい住宅地より自然の中のクモの巣が一番きれい。カミさんの粘り勝ち。

芸術的なクモの巣の写真

 読者から芸術的な写真をいただきました。私のスナップ写真の並みの腕、並みの苦労ではとても及びません。どのようにしたらこんな写真が撮れるのでしょう。

クモの巣4

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